歳神様としめ飾り
12月も20日あたりを過ぎると、大掃除をしたり、年賀状を書いたりと、新しい年を迎える準備に入ります。
とりわけしめ飾りや門松が飾られると「今年もあとわずか…」というような気持ちになってまいります。
毎年飾っているしめ飾りですが、「いつ頃から飾るのか?」とか「飾る意味は?」と思っている方も多いのではないかと思います。ここでは、お正月に飾るしめ飾りについてご説明いたします。
飾る意味は歳神様をお迎えするため
しめ飾りにしても、門松にしてもお正月前に飾るのは『歳神様』という神様をお迎えするためのものと伝えられております。
この『歳神様』は正しいお名前を『大年神(おおとしのかみ)』といわれ、お正月に各家々にいらして、1年の実りと幸せをもたらしてくれるとされます。
また、『とし』の語源は穀物、特に稲やその実りを意味するそうです。
歳神様をお迎えするために、煤払い(大掃除)をして「我が家は歳神様をお迎えする準備が出来ました」という意味でしめ縄を飾ります。
すると、歳神様は安心して家に入ってこられるといわれております。
余談ですが歳神様は、お父さんがヤマタノオロチ退治で有名な須佐之男命(スサノオノミコト)といいまして、天岩戸伝説でしめ縄の起源に一枚噛んでおります。
また、妹さんは宇迦之御魂神(ウカノミタマノカミ)とちょっと聞いたことがないお名前ですが、一般的に稲荷神といわれる神様です。ご兄妹でとても稲作信仰に縁のある神様ですね。
しめ飾りはいつ頃、どこに飾る?
平安時代より、12月13日を『正月事始め』と言い、正月に向けての準備を始める日とされています。この日の行事で重要なのが『煤(すす)払い』と『松迎え』の行事です。
煤払い(大掃除)をして、松を迎えるので、13日からは何時でも飾ることは出来るとされておりますが、現在ではクリスマスが終わる25日以降に飾る方が多いようです。
ただし、29日は「二重に苦しむ」とされて縁起が悪く、31日に飾るのは「一日飾り」とされ、これも縁起が悪いとされております。
一説に歳神様は31日の早朝に家にいらっしゃるそうなので、31日に飾っては遅いということだそうです。また、大安や仏滅を気にかける方もいらっしゃると思いますが、大安や仏滅は『六曜』と言って中国で発生した占いの考え方で、正月の歳神様は神道の考え方なので気にしなくても良いとされております。
飾る場所ですが、地域により様々あると思いますが、歳神様は玄関より入って来られるとされているので、玄関に飾る場合が多いようです。
しめ縄と、しめ飾りの違い
しめ縄には、神様をまつるのにふさわしい神聖な場所であることを示す意味があります。
しめ縄が神の領域と現世を隔てる結界となり、その中に不浄なものが入らないようにする役目を果たしているとされます。
その由来は、須佐之男命が高天原(タカアマハラ)で悪さばかりするので、怒った天照大神が天の岩戸の中に隠れてしまいました。須佐之男命が追放され、天照大神が天の岩戸から出た際に、再び天の岩戸に入らないようしめ縄で戸を塞いだという日本神話にあるとされ、「しめ」には神様の占める場所という意味があるといわれています。
しめ縄に使用される縄には、普段使う縄は右へねじる『右綯い(みぎない)』ですが、お正月のしめ縄は特別なもので、左へねじる『左綯い(ひだりない)』になっております。
また、しめ飾りというのは、しめ縄に縁起物などの飾りをつけたものをいいます。おもな縁起物には『紙垂(しで)』、『裏白』、『譲葉』、『橙』などがあります。
しめ飾りの飾り方
しめ飾りは地域によって様々な形があり、飾る場所も玄関や神棚など様々ですが、ここでは玄関飾りを例に、ご説明したいと思います。
玄関飾りは、人の目線より高い位置に飾るとされております。
ごぼう注連(ゴボウジメ)など向きがあるものは殆どの場合、太い部分が右にくるように飾ります。これは、古来より左を神聖、右を俗(日常)と考えるので、神様から見た時に元の太い部分が左側になるように飾ります。(人からみると、向かって右側に元の太い部分がきます) しめ飾りの飾りには次のようなものがあります。
①紙垂(しで)
落雷があると稲が育ち豊作となるとされ、紙垂は、雷光・稲妻をイメージし、邪悪なものを追い払うとされます。しめ縄に垂らして神域・祭場に用いた場合は聖域を表す印となります。
②裏白(うらじろ)
裏白は常緑のシダ植物で、表は緑だが裏は白いことで「裏を返しても心は白い」として心の潔白さと、「白髪になるまで長生きする」などを表しているとされます。
③譲葉(ゆずりは)
譲葉の名は、春に枝先に若葉が出たあと、前年の葉がそれに譲るように落葉することから、その様子を親が子を育てて家が代々続いていくように見立てて縁起物とされ、しめ飾りに使用されるようになったといわれます。
④橙(だいだい)
名前が「代々」と同じ音となるので縁起が良いとされ、しめ飾りに使用されるようになったとされています。
しめ飾りを飾る期間
しめ飾りを飾る期間は『正月事始め』から『松の内』まで飾るとされております。
『正月事始め』に飾る由来は、平安時代にまで遡るとされ、12月13日に煤払いをして、山に松の若木を取りに行く『松迎え』をしたことが由来とされます。
『松迎え』は時代が下るにつれ、お正月に必要となる物を取り揃える行事となってきて、現在ではお歳暮を贈る時期がだいたい13日頃から始まります。
前述致しましたが、現在では13日では早すぎる(クリスマスがまだ終わっていない等)という考え方が一般的で、25日以降に飾る方が多いようです。
飾りを外す目安とされる『松の内』ですが、関東では7日まで、関西では15日までが『松の内』とされるなど地域によって違いがあるようです。7日で飾りを外しても良いとは思いますが、心配な方は家族の方と相談したり、最寄りの神社に聞くと良いでしょう。
外したしめ飾りは、小正月に地域や神社などで行われる左義長(どんど焼き)で焼き、正月行事に区切りをつけます。左義長に持っていけない場合には、神社に納めると良いでしょう。地域によっては、しめ飾りを回収してくれるところもあるようです。
無理な場合には燃えるごみとして出しますが、神聖なものですから、ほかのごみと別にしたり、紙に包んで出したり、清酒や塩で清めたりすると気持ちが良いと思います。
さいごに
しめ縄について飾り方や意味、由来などを書きましたが、地域差が大きいのも正月行事や風習の違いです。
「住んでいる地域では違う風習がある。」という方も、もちろんいらっしゃるとは思いますが、『大体はこのような形』ということで、ご理解いただきたいと思います。
伝統的な行事ですので、「お正月だから何となく」飾るよりも、その意味を理解して、しっかりとしめ飾りを飾って歳神様をお迎えして、楽しいお正月を過ごしていただきたいと思います。
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