じゃがいもの栽培
ジャガイモは私たちが普段スーパーや八百屋で購入する野菜の中でも、最も身近で購入する頻度も多い野菜の1つではないでしょうか?
フライドポテトやポテトチップス、サラダに肉じゃがカレーライスなど調理方法も豊富で、普段から目にする機会も多いと思います。
食べる一方で、他の作物に比べても栽培が難しくなく、収量の上がる作物として家庭菜園でも人気の植物です。
今回はジャガイモの栽培のしかたなどについて、ご紹介したいと思います。
ジャガイモとは?
ジャガイモはナス科のなかま
ジャガイモはナス科ナス属の多年草の植物です。
世界中で栽培されており、デンプンが多く蓄えられる地下茎が芋として食用とされます。
煮込み料理の他にも、コロッケやポテトチップスなど加工されて市場に流通している他にも、デンプンの原料として栽培されていたりもします。
保存しやすい野菜となる一方で、穀類として主食とされることもある食物で、ビタミンCやカリウムなど栄養も豊富に含まれます。
ジャガイモの出身はアンデス
ジャガイモの原産は南アメリカのアンデス山脈とされています。中南米では小さなジャガイモの原種が今でも野生しています。
大航海時代に入り、ヨーロッパ人が南北アメリカへ進出すると、ヨーロッパやアジアにも伝わり、日本へは16世紀末に伝わってきました。
オランダ人により持ち込まれたとされ、ジャワ島のジャガタラを経由して長崎に持ち込まれたので最初は”ジャガタライモ”と呼ばれ、やがて短縮されて”ジャガイモ”と呼ばれるようになったそうです。
ジャガイモを栽培するには
春植えと秋植えがあるジャガイモ
ジャガイモの種芋は春先に専門店やホームセンターなどで販売されているのが多く目にします。
種芋は寒さに弱いため、寒い場所に保管しておくと種芋が腐ってしまう場合があるので注意しましょう。
図は春植え、秋植えの植え付け時期と収穫時期をグラフ化したものですが、先にも述べた通りジャガイモはナスの仲間なので、日照が短く気温の上がらない東北・北海道では秋植えはお薦め出来ません。
種芋は普段スーパーや八百屋で販売されているジャガイモではなく、専門店やホームセンターで販売されている、農林水産省の検査に合格した合格証の付いた種芋を購入することをお勧めいたします。
栽培する前に準備するもの
〇プランター栽培
プランターで栽培する場合は、深さが30㎝以上の深型のプランターを用意しましょう。地下茎が伸びる植物ですので、浅いプランターでは芋が大きくなれません。
株と株の巾は30~40㎝程度離して植えるので、横巾が80㎝のプランターですと、2株ほど植えるのが適度な量です。
〇畑での栽培
畑で野菜を作る前に土壌酸度を測定しましょう。じゃがいもはpH6前後の弱酸性を好む植物なので、石灰などで中和する場合には中性に傾きすぎないように注意しましょう。
植え付けの1週間前ほどに、1㎡あたりに堆肥2~3㎏と化成肥料か配合肥料を100gほど施してよく耕しておきます。
※ジャガイモは連作を嫌うのでも有名な植物で、収穫後の畑は1度休ませた方が良いとされます。
種芋の植え付け
1.芽だし
植え付けの2~3週間ほど前から種芋の芽出しをします。朝から夕方頃まで日なたに種芋を並べ、太陽光に当てます。
先にも述べた通り種芋は寒さに弱いので、日が落ちたら必ず寒くない場所に保管してください。
芽出しをすると定植後の発芽が揃い、その後の生育が良くなります。
2.種芋を切る
50g程度の種芋が小さいものはそのまま植えますが、大きい種芋は芽出し後に切りましょう。
だいたい1片が40g程度になるように切ります。切り方は芽が出ている場所を残し縦に切るようにします。
切り口が腐るのを防ぐため、切り口に草木灰などを付けて、1日ほど直射日光で天日干しをしましょう。
3.植え付け
巾が60~70㎝で深さが10㎝程度の植え溝を掘り、30㎝間隔で植え付けします。
植え付ける場所が深すぎると芽が出にくくなってしまうので、5㎝ほど土が乗る程度が目安となります。
4.芽かき・土寄せ
種芋から芽が5㎝ほど伸びてきたら、硬くて良い芽を2~3本残して残りを引き抜きます。種芋が動かないようにしっかりと押えて、土の下の方で芽を切るようにしましょう。
芽かきが終わったら軽く土寄せをしますが、この時に追肥をしてから土寄せをすると手間が省けます。
5.さらに土寄せと追肥
種芋の株が30㎝ほどに成長したら、さらに土寄せをします。最初に土寄せ時のように追肥をした後に土寄せをすると手間が省けます。
ジャガイモは太陽光に当たると緑色になり、有害物質のソラニンの含有量が増えてしまうので、土から出た地下茎は土寄せをして埋め戻しましょう。
6.摘花・摘花
ジャガイモは花が咲くと、種が出来、実も成ります。
ですが、地下茎(イモ)を大きくしたいので、花や実を摘むことで地下茎にいく養分を多く出来るので、摘花・摘花はできるだけした方が理想的です。
ジャガイモにつく害虫や病気
ジャガイモにつく害虫
ジャガイモに付きやすい害虫として知られているのが、”テントウムシダマシ”です。
害虫が付いた場合には、捕殺するのが基本ですが、量が多かったり、捕殺するのに抵抗がある場合は殺虫剤や、害虫と病気両方に効果のある殺虫殺菌剤などを散布します。
近年では天然成分を主原料とした殺虫剤や殺虫殺菌剤もあります。
ジャガイモに表れる病気
〇そうか病
そうか病に感染すると、イモの表面にカサブタのような病斑が出来ます。
予防するには、
1.健全な種芋の使用
2.連作の回避
3.未熟な堆肥を使用しない・アルカリ性資材の使用を避ける
などがあります。
〇疫病
疫病に感染すると、葉が黒くなります。疫病に感染しても収穫をすることは出来ますが、雨などで病原菌が土壌に残ってしまうと、土壌中で芋が腐ってしまいます。
連作障害
先にも述べましたが、ジャガイモは連作障害を起こしやすい植物の1つです。
ナス科の植物も共通して連作障害を起こしやすく、ナス科で家庭菜園での人気作物には、ナス・トマト・ピーマンなどがあります。
ジャガイモの場合、1度育てた畑は1~2年ほどナス科以外の植物を育てることで連作障害を避けやすくなるともいわれております。
連作をすればするほど病害虫の増加や、肥料バランスが崩れることにより生育障害が表れるなどの障害が起こります。
ジャガイモの収穫
春植えのジャガイモは、初夏に収穫の時期を迎えます。
品種や天候・栽培した地域により収穫時期は異なりますが、目安としては葉の7~8割が黄色くなって枯れてきた頃です。
ジャガイモは雨天や雨上がりに収穫すると腐りやすいので、晴天が続き土が乾いている時に収穫するようにしましょう。
ちょうど梅雨時期と重なる場合もありますので、1週間の天気予報などを参考にして収穫日を決めるのも参考になると思います。
掘ったジャガイモは、風通しの良い日陰で土が乾くまで乾かし、早めに取り込みます。長時間日光に当たると水分が飛び、シワシワになったり、皮が青色になりソラニンの含有量が増えてしまったりします。
収穫後はすぐに食べるか、貯蔵する場合は冷暗所に貯蔵するようにしましょう。
また、収穫したジャガイモを種芋にしたりすると、病気が発生しやすいので、種芋とするのは避けましょう。
ジャガイモの品種
ジャガイモは様々な品種が栽培されており、大きく大別すると粉質の品種と粘質の品種のものに分かれます。
粉質の品種はホクホクした食感が特長ですが、煮崩れしやすいという欠点があります。
粘質の品種は肉質がきめ細かく、煮崩れしにくい反面、粉質の品種ほどホクホク感がありません。
種芋として人気の4品種を紹介いたします。
ダンシャク
球形で、肉色は白色、粉質の品種です。
明治時代の1908年に川田龍吉男爵がイギリスから持ち込んだので、日本では”ダンシャク”という名前が定着しています。
デンプンの含有量が約15%と高く、ホクホクとした食感が人気です。短所として長時間煮ると煮崩れしやすいので、粉吹き芋やマッシュポテト、コロッケなどの調理法で食べるのが人気の品種です。
メークイン
楕円形で、肉色は淡黄色、粘質の品種です。
大正時代にイギリスから持ち込まれた品種で、英名は”May Queen”です。
粘質なので、煮崩れしにくく、カレー・シチュー・肉じゃがなどの煮込み料理に適した品種です。
日本では人気のある反面、イギリスでは忘れ去られた品種だそうで、消費量は日本の方が多い品種だそうです。
キタアカリ
北海道の品種で、形は編球形、皮は白黄色で、肉色は黄色味を帯びた粉質の品種です。
デンプンの含有量が17%と高く、ダンシャクを母親としています。
1987年に品種登録された日本生まれの品種で、カテロンやビタミンCの含有量も多いのが特長です。
ダンシャク同様に煮崩れはしやすいですが、粉吹き芋・マッシュポテト・ポテトサラダ・コロッケに向いており、独特の甘みと、ほっくりした食感があります。
トウヤ
こちらも北海道の品種で、名前の由来は北海道の洞爺湖です。
皮は褐色がかった黄色、肉色は黄色なので別名を”黄爵(こうしゃく)”とも呼ばれています。
デンプン含有量は15%で、やや粘質の品種ですので、煮物には向いてますが、揚げ物には向いておりません。
トウヤもカテロンやビタミンCの含有量が多く、品種登録も1995年と比較的新しい品種です。
ウィルス耐性で大粒・早出しを目標として開発された品種でもあります。
この他にもトヨシロ・ワセシロ・アンデスレッドや”インカのめざめ”など多くの種芋が流通しております。
種芋として流通している多くの品種は共通して栽培が難しくないものが多いので、色々な品種の種芋を栽培して、美味しいジャガイモを味わってみるのも家庭菜園の楽しみではないでしょうか?
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