苦土石灰の使いかた
土壌の酸度調整によく使用される改良材の1つとして苦土石灰(くどせっかい)を挙げられる方は多いと思います。
土壌の酸度調整をするには、消石灰・苦土石灰・有機石灰などが有名ですが、それぞれがどのように違うのか判らないという方も多いのではないでしょうか?
そこで、今回は苦土石灰についてご紹介いたします。
なぜ土壌の酸度を調整するのか?
大多数の植物は、土壌酸度が弱酸性であることを好むといわれています。
しかし、日本の気候ではどうしても酸性が強くなりがちとなります。土壌の酸度を調整する必要性や、方法については過去にご紹介した記事がありますので、そちらを参考に願います。
☜土壌の酸度調整に関する特集はこちら
消石灰と何が違うのか?
苦土石灰と消石灰の大きな違いは3つあります。
①原料の違い
苦土石灰はドロマイトと呼ばれる鉱物を原料として作られます。ドロマイトは苦灰岩(くかいがん)や、苦灰石(くかいせき)などのことを指します。
一方で消石灰は石灰岩(せっかいがん)や石灰石(せっかいせき)を原料として作られます。
消石灰については以前に詳しく取り上げた記事がございますので、そちらをご参考に願います。
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②緩効性か即効性か
苦土石灰の大きな特長として、土壌の中和は消石灰と比べた時にゆっくり効いてくる(緩効性)があります。また、肥料と同時に散布してもアンモニアガス等が発生しにくいともいわれております。土に撒いてもすぐには溶けないので、速効性はありませんが、その代わり植物の根を傷めることもないので、家庭菜園初心者の方には使いやすい土壌改良材です。
【※肥料の成分によってはアンモニアガス等発生してしまうおそれもあります。判らない場合は専門家(販売店や肥料メーカー)に問合せをお勧め致します。】
これに対して消石灰や生石灰は即効性の土壌改良剤である為、土壌中では激しく反応しているので散布後2週間程度は施肥・定植が出来ません。
③消石灰に+αの効果
苦土石灰の成分は炭酸カルシウムと炭酸マグネシウムが主な成分です。これに対して、消石灰は水酸化カルシウムが主な成分ですので、苦土石灰は土壌に対してカルシウム分の補給+マグネシウム分の補給もする事が出来ます。
このマグネシウムは植物の育成にとって、とても大切な微量要素の1つなので非常に重宝します。
苦土石灰の散布手順
①散布する前には必ず土壌酸度の測定を!
土壌酸度 | pH値 |
酸性 | ~5 |
弱酸性 | 5.5~6 |
中性 | 6.5~7 |
アルカリ性 | 7.5~ |
いかに緩効性の土壌改良材であるからといって、過信は禁物です。むやみに使い過ぎるとカルシウムの過剰障害や土が固くなるなど、土壌環境を悪化させる要因になります。
土壌酸度については、左の表を参考にしてください。
②防護衣服は必ず着用する!
消石灰よりはアルカリ性が強く無い苦土石灰ですが、粘膜や皮膚に直接触れると、炎症を引き起こす場合もあります。苦土石灰を散布する際には、必ずマスクや長袖、手袋、保護メガネを着用して作業をしてください。苦土石灰の場合、飛散しにくい粒状の商品が市販されているのが多いですが、粉末の商品も有りますので、粉末の苦土石灰を散布する際には飛散にも注意して散布しましょう。
③どのタイミングで散布するのか?
苦土石灰は、植え付けの1~2週間前に施すのがベストなタイミングです。このタイミングで撒くと、ちょうど種まきや植え付けの頃にじわじわと効いてきます。
また、苦土石灰は撒いてから溶けるまでに時間を要するので、雨が降る前に散布し、しっかり耕すことで、雨が降った後で土壌中に溶けやすくなり、ムラなく中和を進めることが出来ます。
④どれくらいの量を散布するのか?
苦土石灰の一般的な散布量は1㎡に100g あるいは 土1kgに1.5g が適量とされています。1㎡にひと握りくらいが目安となります。この分量で苦土石灰を散布すると、だいたいですがpHが約0.5上がり、土が少しアルカリ性に傾きます。
適量の苦土石灰を土に撒いたら、良く土と混ぜてください。土に苦土石灰が均等に混ざったら散布終了です。
苦土石灰は扱いやすく被害も出にくいですが、最も失敗しない散布方法としては、苦土石灰を混ぜ、1週間経ってから肥料を混ぜ、もう1週間経ったら植物を定植する方法をお勧め致します。
さいごに
植物によって必要な成分や好む環境が違い、それぞれに合った土壌にしてあげることはとても重要なことです。
他の資材と比べて安全性が高いと言われている苦土石灰ですが、過信は禁物です。
散布し過ぎて土壌がアルカリ性になってしまったり、十分な防護をしないで散布してしまうと思わぬ事故を起こしてしまう場合もあります。
苦土石灰を上手に使用して、元気な植物を育ててください。
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