園芸歳時記 令和五年三月
園芸に関係する四季折々の気候や栽培情報、関連する最近の話題などを園芸歳時記と題して月ごとにご紹介しております。
過去に弊社ホームページで特集した内容など、この時期に閲覧していただきたい内容を今回は6項目に分けてご紹介しております。
これからどのような気候になるのか?どんな植物を育て始めようか?と思われている方にご参考にしていただきたいと思います。
【1】弥生<やよい>
「弥生」は「草木弥生月(くさきやよいづき)」を略した言葉で、「弥」は“いよいよ”“ますます”という意味があり、草木が「いよいよ生い茂る」という意味の「弥生(いやおい)」が変化した呼び名といわれております。
そのほかにも、「桜月(さくらづき)」、「花見月(はなみづき)」、「春惜月(はるおしみづき)」「雛月」などの異称もあります。
雛祭り(ひなまつり)
日本の3月に行われる雛祭りですが、いつ頃から始まったのかは歴史的には判明していないとされています。
一説には平安時代の京都で、平安貴族の子女のあいだで雅な「遊びごと」として行われていたとする記録もあるそうです。平安時代においても御所風の御殿「屋形」をしつらえ飾ったものと考えられております。
一方で、同じく平安時代には川へ紙で作った人形を流す「流し雛」があり、「上巳の節句(じょうしのせっく)」として、穢れ払いつまり「災厄よけ」や「守り雛」として祀られる様にもなったそうです。
雛飾りの中段ほどに「左近の桜、右近の橘」がございますが、これは男雛(天皇)から見て左側にあるという事です。御所の紫寝殿では太陽の光が先に当たる方が上位とされましたので、私たちから見ると右側にいる左大臣の方が上位です。
明治以前の雛人形は男雛と女雛を飾る位置は現在とは逆でした。現在の位置になったのは明治の文明開化後に即位式を挙げられた、大正天皇が私たちから見て、左側に立ったのが始まりといわれております。
【2】3月の二十四節気
啓蟄(けいちつ) 【3月6日】
啓蟄(けいちつ)とは、大地が温まり冬眠をしていた生き物たちが目覚める頃のことです。冬ごもりをしていた生き物たちは、久しぶりに感じる爽やかな風と、麗らかな春の光の中で生き生きとしています。
初候の3月6日~10日頃を特に「蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)」と言い、虫とはいうものの、冬眠から目覚める全ての生き物のことを表しております。
『暦便覧』には「陽気地中にうごき、ちぢまる虫、穴をひらき出ればなり」と記されております。柳の若芽が芽吹き、ふきのとうの花が咲く頃とされます。期間は、この日から次の節気の春分前日までが啓蟄です。
春分 【3月21日】
「春分」は、昼と夜の長さがほぼ同じになり、この日を境に昼間の時間が長くなっていきます。「自然をたたえ、生物をいつくしむ日」という国民の祝日でもあります。
また、この頃は多くの出会いや別れがあり、新生活の始まりなど変化の多い時期でもあります。
春分の日の前後3日間、合計7日間は春の彼岸(春彼岸)といい、先祖の墓参りをする習慣があります。仏教では、あの世は西に、この世は東にあるとされ、太陽が真東から昇って、真西に沈む春分の日と秋分の日は、あの世とこの世が最も通じやすい日と考えられ、春と秋の彼岸にお墓参りをするようになりました。期間は、この日から次の節気の清明前日までが春分です。
【3】3月に需要が高まる園芸商品
切花延命剤
令和5年の春彼岸は、春分の日を中日として前後3日、2023年は3月18日~24日の7日間が日程となります。
仏様にお供えするお花は是非とも長持ちしてほしいものです。そんな時には切花延命剤をお勧めいたします。
切花延命剤は、花の活け水が劣化するのを防ぐ他にも、切花を長持ちさせる成分が入っており、生き生きとしたお花を保ちます。
あおもり藍切花延命剤
「あおもり藍の切花延命剤」は、無農薬で育てた「あおもり藍」から抽出したエキスを配合することで、菌の繁殖を抑制することが出来る切花延命剤です。天然成分で切花を長持ちさせるだけでなく、お花のつぼみも綺麗に開花させることが出来ます。
クリザールフラワーフード
クリザールフラワーフードは、ご家庭用の切り花鮮度保持剤です。
切り花の水揚げを促進し、十分な栄養を与え、切り花を美しく咲かせ、日持ちを長くします。
花器の生け水を清潔に保ちます。すべての切り花にご使用いただけます。
キープフラワー
花びんの中のバクテリアの繁殖を抑え、切花に必要な栄養を補給します。
キープ・フラワーは、毎日の花びんの水替えの煩わしさを避け、花の美しさを最大限に引き出し長持ちさせることが出来ます。
土壌改良剤
植物にとって住居とも言える土壌、この土壌を改良してあげることにより、植物をより快適に成長させてあげることが出来るようになります。人間が住む住居も長年住んでいると、風化して傷んできたり、時には天災を受ける事もあります。土壌も何回も繰り返して使っていると、傷んでしまうのです。土壌改良剤は、言わば土壌のリフォーム剤です。
ビートルパワー
土壌において肥料や有機物を分解しながら植物の吸収できる栄養(無機物)となるには微生物は必要不可欠であり微生物の働きでその後の生育は大きく左右されます。
微生物は分解しにくい有機物(魚粕、種粕等)ほど分解工程で活性化して微生物のチカラを発揮させながら土壌中の有用物質となります。また微生物が多くなると土壌は柔らかくなり最終的には地力向上の手段の一つとして有機物を分解した腐植を増加し保肥力を高めて土壌は安定していきます。
・菌種(10 種類)菌数が豊富で好気性、嫌気性の菌を共棲。
・有機物の分解を速やかに行い肥料の吸収を助ける。
・微生物が活動した後の代謝物が植物へ好影響。
・土壌の生物性が豊かになり柔らかい土となる。
・原料:微生物、水、魚エキス
堆肥類
土壌に有機分や微生物がなぜ必要かと言うと、バクテリアなどの微生物は有機成分を食糧として、無機物の肥料分を生み出します。せっかく有機系の肥料を施肥したとしても、良性の微生物が土中にいないと植物は十分に肥料分を吸収できないということです。土壌を使い続けて有機分や微生物がいなくなり、収量などを十分に確保出来ないことを“連作障害”と言い、連作障害の対策としては、もみ殻・牛フン・生ゴミなどから作られる堆肥を土壌に混ぜる方法があります。
また最近では、水で薄めて土壌に撒くタイプや、土壌の土と混ぜるタイプの促進材なども販売されております。
くん炭
くん炭はもみ殻や木くずを、400℃以下の低温でじっくりと蒸し焼きにして作る土壌改良剤で、業務用としても、家庭園芸用としても幅広く使用されます。
400℃前後で焼かれることにより、腐生性微生物の餌となる有機物を一切含まず、細菌やかびの繁殖を抑えることが出来るうえ、保水性・排水性・通気性の向上や消臭などの効果があるので、直接畑に入れたり、培養土の原料にもなります。
また北国では、黒いくん炭は日光を浴びることにより、周囲を温め畑の雪を早く消して、なおかつ土壌改良にもなるので大変重宝がられます。
活力剤
活力剤は、植物の肥料三要素といわれる「窒素(N)・リン酸(P)・カリウム(K)」が肥料の規定量を満たさず、薄い濃度に希釈したものが該当します。
肥料とはいわれない成分が入っていて、植物のからだや生長の助けとなる二次要素と微量元素が含まれています。
活力剤の成分となる二次要素と微量元素は、主にミネラル成分でビタミンやアミノ酸などが含まれ、植物の生育を活性させます。
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・葉の色付きを良くし、必要な栄養分の補給をするので植物がイキイキ育ちます。
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活力剤は1年中どの時期でも、植物に元気がない時や、さらに丈夫に育てたい時に使える栄養剤です。
【4】雪解けとともに土壌のケアを!
植物にとって住居とも言える“土壌”
植物にとって住居とも言える土壌、この土壌を改良してあげることで、植物はより快適に成長させてあげることが出来ます。
人間が住む住居でも長年住んでいると、風化して痛んできたり、時には天災を受ける事だってあります。
土壌も何回も繰り返して使っていると、痛んでしまうのです。今回は土壌のリフォームについてお話いたします。
土壌のケアに必要なポイントはおおむね以下の3つです
○土壌酸度(pH)の調整
○土壌の有機分や微生物の回復
○土を植物の好みの硬さにする
プランター栽培や鉢植えなどの場合は、土ごと取り換えてしまうのが手っ取り早い方法とも言えますが、家庭の庭などで栽培している家庭菜園などでは土を全て取り換えるという訳にもいきません。
「最近肥料もしっかりやっているのに収量や実つきがイマイチ良くないな?」と思っていらっしゃる方は、参考にしてみてください。
土壌酸度の調整
酸性度(pH)って何だろう?
酸性度とは、酸としての強さの程度を示す値で、pH(水素イオン指数)で表されます。
pHは水素イオン(H+)濃度を表す指数で、0〜14の数値「0(酸性)〜7(中性)〜14(アルカリ性)」で表されます。一般的に植物は中性~弱酸性の土壌を好むと言われています。
酸性が強くなると野菜の根が傷む、根がリン酸を吸収しにくくなるなど、野菜にとっては良い条件ではありません。
逆にアルカリ分が強すぎても、マグネシウムや鉄などのミネラルの吸収が妨げられ、野菜の育ちが悪くなります。また病気にもかかりやすくなります。
植物によってそれぞれ好む酸度が違います。
植物にはそれぞれ好みの酸度、“好適土壌酸度”というものがあります。例えばブルーベリーやサツキなどは酸性土壌を好む代表的な植物です。
下記のリンクには農林水産省がまとめた栽培植物の好適土壌酸度の一覧表をPDF形式で参照しています。
土壌酸度(pH)の調整方法
日本の土壌は酸性に傾きやすいと言われております。土壌酸度を中性・アルカリ性に近づけるためには、草木灰・有機石灰や苦土石灰・消石灰などを撒いて中和する方法があります。ただし栽培中の肥料の使用や、降雨の影響で土壌は徐々に酸性へ近づいていきます。
一方アルカリ性が強くなった土壌は戻すのが大変です。このような場合、“クリーニングクロップ”と言われる植物を栽培する方法が有ります。トウモロコシなどの吸肥力が高いイネ科の植物が有名なクリーニングクロップです。
栽培時には尿素や硫安などの単肥を使用するのも効果的と言われています。
土壌酸度(pH)測定方法
土壌の酸度を測定するには、ほ場へ直接酸度測定器を挿しこむ方法と、ほ場の土を水と混ぜ、その上澄み液のpHを測定する方法があります。
土壌酸度を測定する商品は、ホームセンター、園芸店、種苗店、園芸用品を取り扱っている雑貨店などで販売されております。
土を植物の好みの硬さにする
植物にはそれぞれ土の好みの硬さがあります。特に化学肥料を長い時間使っていると、土は硬くなってしまう傾向があります。また、砂地などに植物を栽培しようと思った場合には、保水性や保肥性などを改良してあげなければならない場合などもあります。
プランターなどの土が硬くなってしまった場合などには、その硬くなった土に1割程度混ぜるタイプの土壌改良材などが市販されていますが、露地栽培などの場合には大量の土壌改良剤が必要になってしまうため、この方法は中々使えません。
このような場合には、単用土の特徴を活かして土をブレンドする方法があります。それぞれの土の特徴を表にまとめてみました。
通気性 |
排水性 水はけ |
保水性 水もち |
酸度 (pH) |
粒の サイズ (㎜) |
|
赤玉土 小粒 | △ | ○ | ○ | 5~6 | 3~6 |
赤玉土 中粒 | ○ | ○ | ○ | 5~6 | 6~12 |
赤玉土 大粒 | ○ | ◎ | △ | 5~6 | 12~20 |
鹿沼土 小粒 | △ | ○ | ○ | 4~5 | 2~6 |
鹿沼土 中粒 | ○ | ○ | ○ | 4~5 | 6~12 |
鹿沼土 大粒 | ○ | ◎ | △ | 4~5 | 12~20 |
黒土 | △ | × | ○ | 5~6 | 灰土 |
腐葉土 | ○ | ○ | ○ | 6~7 | 堆肥状 |
堆肥 | ○ | ○ | ○ | 6~7 | 堆肥状 |
水苔 | ○ | ○ | ○ | 4.5~5 | 綿質 |
川砂 | ○ | ○ | × | 6~7 | 砂状 |
ケト土 | △ | × | × | 5~6 | 粘土質 |
軽石 小粒 | △ | ○ | × | 7 | 3~6 |
軽石 中粒 | ○ | ○ | × | 7 | 6~12 |
軽石 大粒 | ○ | ○ | × | 7 | 12~20 |
くん炭 | ○ | △ | ○ | 8~9 | 3~5 |
バーミキュライト | ○ | ○ | ○ | 6.5 | 粒状 |
ピートモス | ○ | ○ | ○ | 4 | 粉状 |
パーライト | ○ | ○ | △ | 8 | ~5 |
ゼオライト | ○ | ○ | ○ | 6~8 | 粉状・粒状 |
土壌が硬い場合
団粒構造が崩れ、目が詰まってしまった粘土質の土は、水はけが悪くなっているので、パーライトなどの粒子の大きい用土を混ぜたり、腐葉土やピートモスを加えるのがオススメです。
土壌が砂状の場合
サラサラで水はけが良過ぎる砂質の土の場合は、肥料をキープする力もないので、赤玉土や黒土を混ぜて保水力と保肥力を高め、さらに、腐葉土やピートモスを加えると土質がアップします。まずは、自分の庭の土質を理解し、適切な方法で、定期的に土壌改良を行うようにしましょう。
【5】3月に農作業の始まる野菜
3月に種撒き、苗の定植などが始まる野菜の一例をご紹介致します。
※寒冷地や、温暖な地域などで差が出る場合もありますので、作付する地域の気候に合うように農作業を始めることをお勧めいたします。
作物名 | 一年/多年 | 生育温度 | 種まき | 苗植え | 旬の収穫時期 |
青唐辛子 | 一年生 | 20~30℃ | 2月~5月 | 4月~7月 | 7月~9月 |
アスパラガス | 多年生 | 15~20℃ | 2月~4月 | 4月~7月 | 4月~6月 |
貝割れ大根 | 二年生 | 20℃前後 | 年中 | 年中 | 年中 |
南瓜 | 一年生 | 20℃前後 | 3月~6月 | 4月~7月 | 7月~12月 |
カリフラワー | 一年生 | 15~25℃ | 年中 | 年中 | 11月~3月 |
キャベツ | 一年生 | 15~20℃ | 年中 | 年中 | 12月~6月 |
くわい | 多年生 | 20~30℃ | – | 2月~4月 | 11月~2月 |
こごみ | 多年生 | 22℃前後 | – | 3月~4月 | 4月~5月 |
牛蒡 | 多年生 | 20~25℃ | 3月~5月 | – | 11月~2月 |
小松菜 | 一年生 | 15~25℃ | 3月~10月 | – | 12月~2月 |
さやえんどう | 一年生 | 15~20℃ | 10月~8月 | – | 4月~6月 |
じゃがいも | 多年生 | 10~25℃ | – | 3月~4月 | 5月~6月 |
春菊 | 一年生 | 15~20℃ | 3月~5月 | – | 11月~3月 |
ズッキーニ | 一年生 | 20℃前後 | 2月~6月 | 4月~6月 | 6月~9月 |
そらまめ | 一年生 | 15~20℃ | 1月~3月 | 2月~4月 | 4月~6月 |
大根 | 二年生 | 20℃前後 | 3月~4月 | – | 11月~2月 |
玉ねぎ | 多年生 | 15~20℃ | 2月~3月 | 4月~5月 | 3月~4月 |
ちんげんさい | 一年生 | 20℃前後 | 3月~10月 | – | 9月~12月 |
唐辛子 | 一年生 | 20~30℃ | 2月~5月 | 4月~7月 | 7月~9月 |
とうもろこし | 一年生 | 20~30℃ | 3月~7月 | – | 7月~8月 |
トマト | 多年生 | 20~30℃ | 2月~5月 | 4月~7月 | 6月~8月 |
長葱 | 一年生 | 20℃前後 | 3月~10月 | 4月~10月 | 11月~2月 |
なす | 一年生 | 20~30℃ | 2月~3月 | 4月~6月 | 7月~9月 |
苦瓜 | 一年生 | 20~30℃ | 3月~6月 | 4月~6月 | 7月~9月 |
韮 | 多年生 | 20~25℃ | 3月~4月 | 6月~7月 | 3月~5月 |
人参 | 二年生 | 20℃前後 | 3月~9月 | – | 10月~12月 |
白菜 | 二年生 | 20℃前後 | 3月~9月 | 4月~5月 | 11月~2月 |
パプリカ | 多年生 | 20~30℃ | 3月~4月 | 5月~6月 | 6月~8月 |
ピーマン | 多年生 | 20~30℃ | 3月~4月 | 5月~6月 | 6月~8月 |
ブロッコリー | 多年生 | 15~20℃ | 2月~4月 | 3月~5月 | 11月~3月 |
ほうれんそう | 一年生 | 15~20℃ | 年中 | 年中 | 11月~2月 |
三つ葉 | 多年生 | 17~20℃ | 3月~10月 | – | 3月~4月 |
みょうが | 多年生 | 20~25℃ | – | 2月~4月 | 6月~10月 |
芽キャベツ | 一年生 | 15~20℃ | 年中 | 年中 | 12月~1月 |
レタス | 一年生 | 15~20℃ | 2月~9月 | 3月~10月 | 4月~8月 |
【6】3月頃にお読みいただきたいページのご紹介
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