肥料の種類と選び方
肥料はなぜ必要なのか?
前回の農薬についてご説明した時にも少し触れましたが、人が栽培している植物は、野生の植物とは環境が大きく異なります。
山に自生している植物であれば、付近の森林や野生動物の活動、豊富な微生物によって栄養分を自然に補給することが出来ますが、庭や畑での栽培では栄養分を自然に補給することは困難なのです。
この足りない栄養分を人の手によって補給するのが肥料です。栽培される植物にとって肥料は人間に例えると食事のようなものと言えるでしょう。
肥料には何が入っているの?
肥料には3つの要素すなわち、窒素(N)、リン酸(P)、カリウム(K)どれかの栄養素が必ず入っています。
この3要素の他に、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)を加えた物を5大要素と言ったり、さらに10種類以上の要素(これらは微量要素と呼ばれたりします)が肥料の中に入っているのです。
肥料の3大要素
窒素(N)
葉っぱや茎などの元となる葉緑素を造る時に必要な要素です。特に葉肥と呼ばれます。
油かす、魚かす、尿素、硫安などに多く含まれます。
リン酸(P)
花や果実の生長を促す要素です。特に花肥・実肥と呼ばれます。
骨粉、米ぬか、過燐酸石灰、熔成燐肥などに多く含まれます。
カリウム(K)
根や茎を丈夫にして球根などを太らせる要素です。根肥と呼ばれます。
草木灰、苦土石灰、塩化カリウム、硫酸カリウムなどに多く含まれます。
有機質肥料と無機質肥料
肥料は材料などによって有機肥料と無機肥料に大きく分ける事が出来ます。
植物が肥料分として吸収するためには、無機物の状態でないと通常は吸収出来ません。
※一部では有機物のまま吸収出来るものもあるようです。
有機質肥料 |
無機質肥料 |
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肥料の材質 | 堆肥、米ぬか、家畜の糞等を発酵・熟成させて作る | 鉱物から精製・製造、もしくは科学的に合成して作る。 |
肥料の効き方 | ゆっくり効果が現れ、肥効が長く続く(緩行性) じわじわ効くので、野菜もゆっくり健全に生長する |
施肥した後すぐに効く(速効性) 過剰施用で濃度障害(肥やけ)を起こしやすい肥料もある |
肥料分など | 成分量が無機質肥料ほどはっきりしていない | 成分量が明確で施肥量の調節が容易 |
肥料のコスト | 化学肥料より成分量当たりの価格が高い傾向がある | 有機質肥料に比べて成分量当たりの価格が安価な傾向がある |
肥料の臭い | 臭いの強い物が多い 施肥してから発酵する物もある |
臭いの弱い物が多い |
水との関係 | 土中のバクテリア、根酸などで肥料分を吸収するので、水には左右されにくい | 水に肥料分が溶けやすい 水分に反応することで肥料分が流れ出す |
土壌に対して | 土壌中の微生物の種類が増える | 土壌改良にはならない |
土の緩衝力 | 土の緩衝力(養水分を保持し供給する力)が高まる | 無機質肥料だけを使っていると、土の中の有機物が減り、土の緩衝力が弱くなる |
作付までの時間 | 土壌微生物に分解される過程でガスや熱が出るため、作付けまでに時間が必要な肥料もある | 施肥後、すぐの作付が可能な肥料が多い |
肥料の一例 | ・油かす(窒素分が豊富) ・魚かす(窒素分が豊富) ・米ぬか(リン酸分が豊富) ・草木灰(カリウム分が豊富) |
・化成肥料 ・単肥 ・石灰窒素 |
有機肥料
草木灰や米ぬか、動物のフンなどが主な材料となります。土壌中のバクテリア、あるいは植物の根から出される根酸(こんさん)などによって無機物に分解されてから植物に吸収されます。
大きな特徴は施肥後に発酵・分解する点、ガスや熱を出して施肥後すぐの植え付けが難しい場合もありますが、植物にとって必要な量だけ吸収出来るので、肥料障害(根焼け)の心配が低い肥料が多いです。
無機肥料
鉱石や天然物を科学的に合成したりして作られます。多くは化学肥料とも呼ばれます。
水分に触れると肥料分が流れ出すので、植物に養分を素早く吸収させることが出来ます。
反面、肥料分が多く出すぎて肥料濃度の障害、保管する時に湿気が多いと肥料が固結してしまい、肥料分が流出してしまったりします。
○窒素、リン酸、カリウムのうち、1つだけの要素が入ったものを単肥と言います。
○2種類以上の要素を科学的に合成した肥料を化成肥料と呼ぶこともります。
市販されている肥料の種類
肥料の商品パッケージには必ず3要素の肥料分が印刷されており、“窒素―リン酸―カリウム”の順番で表記されていることが多いです。
※単肥は1つの要素しか入っていない為、肥料成分は1種類のみ記載されています。
例えば化成肥料で8-8-8と表記されていたら、肥料全体に占める肥料分の割合は窒素8%-リン酸8%-カリウム8%ということになります。
市販されている肥料は様々な肥料が販売されていますが、大きく分類すると、単肥の他には複合肥料がおよそ4つの系統で市販されていることが多いです。
普通化成肥料 | 肥料全体に占める3要素の成分量の合計が15%以上、30%未満の化成肥料。 有機質肥料に比べて、個体が一定なので散布機などで手軽に散布することが出来ます。 |
高度化成肥料 | 肥料全体に占める3要素の成分量の合計が30%以上の化成肥料。 肥料分が高い分、均一に撒けないと肥効が斑(まだら)になります。 |
有機入り化成肥料 | 有機入り配合肥料を粒状化し散布しやすくした肥料などです。 肥料により効果は違いますので、説明書を良く確認する必要があります。 |
有機質肥料 | 油かす、魚かすなどで作られていて、アミノ酸等が含まれることが多いので、野菜を作る場合に味や風味が良くなると言われます。 |
効果的に肥料を与える方法
肥料を効果的に植物に効かせるためには、一度に多量に施肥しない方が良いとされています。人間だって満腹になると、それ以上食べたくなくなるし、運動しづらくなります。植物も言わば空腹状態の方が肥料分を良く吸収してくれます。
もう一つのコツは、植物に肥料を探させるようにすること。
株元から少し離れた所に肥料を施すことで、植物はその離れた場所まで根を伸ばしてくれるようになります。
人も空腹になると冷蔵庫をガサゴソと探すように、植物も同じようなことをするのですね。
元肥と追肥
元肥とは植物の植付け前に施肥することで、緩効性で長期間肥効が続く肥料を選んであげるのが効果的です。対して、植栽後に施肥するのを追肥と言い、こちらは化学肥料や、液体肥料などの即効性が高い肥料を使用すると効果的です。
撒いてから発酵が始まる有機質肥料
一部の有機質肥料では、土壌に肥料を撒いてから発酵が始まる肥料もあります。
この場合ガスの発生などで土壌の温度が一時的に上がってしまう場合があり、施肥後2~3週間後に植付けしなければならない場合があるので、注意して使用しなければなりません。
肥料ではない肥料?
一般的に肥料かな?と思われる物でも肥料ではない場合があります。
一例を紹介致します。
活力剤
活力剤は栄養分が入っておりますが多くの場合、成分が低いために肥料とはみなされません。アンプル剤などがこれにあてはまります。
しかし、植物の生理機能を高めるものもあるので、肥料とセットで使用すると効果が高い活力剤もあります。
土壌改良剤
バークたい肥や腐葉土、木炭など土壌改良材とされるものは肥料ではありません。
しかし、これらには固くなった土をふかふかに戻したり、土中のバクテリアを活性化させる効果があり、土壌と植物にとってはとても良いものです。
酵素肥料
肥料と名前が付きますが、肥料として証明出来ない部分があります。
近年の自然農法で注目されているようですが、効果について科学的に証明されてはいないようです。
肥料も与えすぎると・・・
肥料も使いすぎると、植物にも土壌にも悪影響を与えてしまう場合があります。植物に与える肥料の量はある程度の目安もありますが、状態を良く観察しながら施肥することも大切です。
特に化学肥料を多用しすぎると、土壌が固くなってしまったり、バクテリアがいなくなってしまったりと植物が育ち辛い環境が出来てしまいます。
土壌には栄養分だけではなく、有機物や土の緩衝力も必要とされます。これらが足りなくなった場合にはそれを補う工夫が必要となります。
肥料を効果的に与えることで、美味しい野菜や、綺麗なお花を楽しみましょう。
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